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カスタマーサクセスを設計してみよう(1)〜フレームワークと現状分析〜

前回までの記事で、カスタマーサクセスについて以下の理解を頂いたと考えています。

  • カスタマーサクセスとはユーザの心理ロイヤリティを醸成するための戦略
  • カスタマーサクセスとは「Customer Outcome (結果)」とその結果を得るための「Customer Experience(体験)」を最大にすることが重要
  • 最大の結果と、最高の経験を提供するためには、購入後のサポートに対する考え方を「ランニングコスト」から「投資」に切り替える必要がある

そして、その上でスマートフォンの購入を例に、ユーザがどの様な経験をするのか?そして、その経験に対してどの様なサービスを提供することができるのか?を考えてきたかと思います。

では、ここからは、実際に自分たちの提供しているサービスや商品に当てはめて、どの様なカスタマーサクセスを設計すべきか考えていきたいと思います。

本記事では第一歩として、現状分析を行っていきます。

カスタマーサクセスの大枠(フレームワーク)

「カスタマーサクセス 設計方法」などとググるとわかると思いますが、各社やり方は結構ばらばらでして、また考え方は抽象度の高いものが多いと思います。なので、ここは私の偏見から、ベンダー(販売者観点)で一旦以下のフローを定義したいと思います。

項目説明
提案フェーズ製品購入前の段階。営業チームがお客様に対して製品提案や接客をしているタイミング。
導入フェーズ製品を導入するフェーズ。サーバ構築やソフトウェア導入、管理者作成などなど。
ランニングフェーズ導入がだいたい完了し、ユーザ様で試験運用を開始するフェーズ。
運用フェーズ試験運用での大きな課題を回収し、実運用を開始するフェーズ。
活用フェーズ定常運用が問題なく回る様になったのち、自社にあった使い方を模索/実行するフェーズ。
更新フェーズ製品の利用を継続する判断を行うフェーズ
推奨フェーズ製品に愛着がわき、他のユーザにも利用を進めるフェーズ。

今回カスタマーサクセスの活動で考えるべきは、「導入フェーズ」以降である点は言うまでもないと思います。また各フェーズの意味合いについてもそこまで疑問は持たれないと思います。(なお提供サービスによっては、ランニングフェーズが無い場合もあるとは思います)

ただ、こちらの表を見ておそらく「更新まではわかるものの、推奨フェーズってなんだ?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。

実はこの推奨フェーズこそが、カスタマーサクセスにおけるベンダー観点での目指すべき姿・旨味の部分となります。ただ、”推奨フェーズ”について説明をすると、それだけで1つの記事が出来てしまうため一旦今回の記事では飛ばして「導入フェーズ 〜 更新フェーズ」までを考えていきたいと思います。(推奨フェーズについては後日まとめますので、ご期待ください ^_^)

各フェーズにおける実行項目をまとめよう

では、ここからエクササイズを開始していきたいと思います。

まず最初に「各フェーズにおいてユーザが行うことを全て」書き出していってください。粒度は可能な限り具体的に書き出すと良いです。

前回の記事でもお伝えしましたが、ここは様々な観点が必要になるため、複数人で実施していくと良いと思います。例えばホワイトボードなどにフェーズの枠だけ作成した上で、ポストイットを貼り付けていく様な取り組みをしてもいいと思います。

行き詰まる場合は、前回の記事の中の「Q1. スマホを購入した後、ユーザは何をするのか?」を参考にしてみてください。

ユーザが体験することを纏めよう

ユーザが実行することをまとめた後は、今度はその「実行」をする為にユーザがどの様な「体験」をするかをまとめていきましょう。こちらは現時点に実際にユーザが体験していることをリストアップしましょう。

例えば「ソフトウェアをインストールする(実行)」があった場合に、体験としては以下の様なことが考えられます。

  • インストール手順/ドキュメントを探す
  • ドキュメントを読む
  • 手順書通りに実行ファイルのダウンロード、ダブルクリックを行う
  • うまくいかない場合に管理者に問い合わせる

行き詰まる場合は、前回の記事の中の「Q2. 各フェーズで、ユーザが「何を体験するのか」」をご確認ください。

体験に対して、提供しているサービスをリストアップしよう

ここまでで、各フェーズでユーザが実行すること・体験することを設定することができました。では、ここからはベンダー側の観点に戻って、「ユーザの各体験」に対してどの様なサービスを現在提供しているかリストアップしていきましょう。

例えば「ソフトウェアをインストールする(実行)」があった場合に、体験としては以下の様なことが考えられます。

  • インストール手順をメールでPDFで送っている
  • OSごとに異なるPDFを提供している
  • Google上では検索に引っかからないページにドキュメントを公開している

こちらも様々な観点が必要になるため、複数人で実施していくと良いと思います。

各フェーズにおけるゴールをまとめよう

最後に、自社サービスにおける各フェーズのゴールを設定していきましょう。ゴールというのは「xxxを満たしていれば次のフェーズに移って良い」とする為のxxxの部分、要するに次のフェーズに進む為の条件となります。

ここで重要なのが、「過去の経験から、現実的かつ理想的なゴールを定める」ということです。

例えば従業員全員に提供するサービス(クラウド上のファイルストレージ)を考えた場合、「オンボーディングは全てのユーザが利用することをゴールとする」としてしまうと、99%の社員はすでに利用をしているのに1%の社員が利用しないだけで次のステップに進めない状態となってしまいます。新しい製品を導入しても頑なに利用しないユーザさんって絶対いるので、現実的じゃ無いですよね。

とはいえ、あまりにも低いゴールを設定してしまうと、本来はもっとオンボーディングの支援をすべきなのに、次のステップに意図せず進んでしまうケースもあります。なので、適正なゴールを定めることが非常に重要となりますので注意してください。

これまでフェーズなどをあまり考えてこなかった場合も、なんとなく程度で各フェーズのゴールはあると思いますので、過去の経験などを踏まえて考えていきましょう。またこのゴールは可能な限り定量的なものにする様ご注意ください。

現状分析まとめ

現状分析お疲れ様でした。本記事通りにステップを踏むことでおそらく、下記の表を埋めることができるレベルで情報がまとまったと思います。

項目ユーザが実行することユーザが体験すること提供ずみのサービスフェーズのゴール
導入フェーズ
ランニングフェーズ
運用フェーズ
活用フェーズ
更新フェーズ

恐らく実際にまとめてみると、すでに「こういうサービスがあると良いのではないか?」といった案も出てきていると思います。是非そのアイディはしっかりとメモに残してください。

次回の記事では、今回振り返った内容を元にカスタマーサクセスの設計をおこなっていきたいと思います。