前回の記事の手順に沿って、すでに皆様の手元には下記の表が埋まった状態にあると思います。これが、現在皆様がユーザさんに対して提供している体験価値へ向けたサービスとなります。
本記事では下記表をベースに、ではこれからどの様なカスタマーサクセスを設計していくべきかを前回に続き考えていきたいと思います。なおまだ埋まってない方は、一度前回の記事に戻ってこの表を作成ください。
項目 | ユーザが実行すること | ユーザが体験すること | 提供ずみのサービス | フェーズのゴール |
---|---|---|---|---|
導入フェーズ | ||||
ランニングフェーズ | ||||
運用フェーズ | ||||
活用フェーズ | ||||
更新フェーズ |
より良い体験を与える為のサービスを考えてみよう
ユーザが各フェーズにおいて体験することに対して、どうの様にすれば、より良いサービスを提供できるかリストアップしていきましょう。ここで重要なのが「工数的に難しい」いった要素は一旦気にせず、思いつくアイディアを全て書いていきましょう。
例えば、クラウドファイルストレージサービス(BoxやDropboxの様なもの)における導入フェーズのにおいて「ユーザ環境のデータを全てクラウドにあげる」と行った実行項目があったとします。
その場合、ユーザは「ドキュメントを探す」「ドキュメントを読んだ上で1つ1つのフォルダをアップロードる」と行った体験をすると仮定した場合に、どの様なサービスを提供できるでしょうか。パッと思いつく限りでも下記の様なサービス案が浮かんできます。
- Web常に日本語のマニュアルを準備して、Google検索でも引っかかる様にする
- ユーザが実際に行う操作を動画で説明する(Youtubeに載せる)
- ファイルアップロードを請け負うサービスを提供する
- ファイルアップロードを全自動で行うツールを作成し提供する
- 定期的にトレーニングを開催し、ユーザに参加してもらう
- 導入済みの他のユーザとミーティングを設けて、実際の体験談を伝えてもらう
- 定例会を実施して、アップロード中に発生した問題をミーティングで解決する
工数ごとに分類しよう(ハイタッチ・ロータッチ・テックタッチ 手法)
提供すると良いサービスがリストアップできた後は、今度は各サービスを提供する為に掛かる工数に応じて、ハイタッチ/ミドルタッチ/テックタッチ という3つの分類に分けましょう。それぞれの分類は、ザックリと以下の通りです。
項目名 | 工数 | 説明 |
---|---|---|
ハイタッチ | 大 | 各ユーザへ対する、個別対応(1対1)のアプローチを指します。 導入にあたっての現地作業や、毎週の定例会、お客様事情を踏まえたサポートなどです。 |
ロータッチ | 中 | 複数ユーザへ対する、一般的な対応(1対 複数)のアプローチを指します。 ハンズオントレーニングや、数ヶ月に一度のミーティング、カンファレンスなどです。 |
テックタッチ | 小 | 多くのユーザへ対する、効率対応(1対 多数)のアプローチを指します。 DMの配信やドキュメント、動画配信といった人の手を極力介さないものです。 |
注意して欲しいのが、ここで実施して欲しいのが、リストアップした各サービスをハイタッチ/ミドルタッチ/テックタッチ に分けてください。決してユーザをハイタッチ/ミドルタッチ/テックタッチ に分類するのではありません。(よく混乱される方がいますのでご注意ください。)
私が上記であげた例にとると、以下分類になると思います。
- Web常に日本語のマニュアルを準備して、Google検索でも引っかかる様にする
- →テックタッチ
- ユーザが実際に行う操作を動画で説明する(Youtubeに載せる)
- →テックタッチ
- ファイルアップロードを請け負うサービスを提供する
- → ハイタッチ
- 定期的にトレーニングを開催し、ユーザに参加してもらう
- → ロータッチ
- 導入済みの他のユーザとミーティングを設けて、実際の体験談を伝えてもらう
- → ハイタッチ
- 定例会を実施して、アップロード中に発生した問題をミーティングで解決する
- → ハイタッチ
メージ湧きましたでしょうか。少々分類に困る場合は、工数がかなりかかるのであればハイタッチ、そこまでかからないのであればロータッチという分類でも良いので、ざっくりと分けてもらえればと思います。
ハイタッチ・ロータッチ・テックタッチの考え方について
Google先生に質問すると、ハイタッチ・ロータッチ・テックタッチやユーザ毎に分類するといった記載が多くあると思います。例えばユーザ数xx万以上はハイタッチ顧客、ユーザ数xx千以上はロータッチ、それ以下はテックタッチという分類です。
考え方に依存しますが、私個人としては、大規模ユーザだからハイタッチ、小規模ユーザだからテックタッチと、ユーザ毎に分類するやり方は好みません。
理由は、小規模であろうと影響力のあるユーザ様や手厚いフォローをする必要があるお客様はハイタッチ気味の手法を使うべきケースがあるからです。逆もまた然りで、大規模ユーザの場合もユーザ側で体制がしっかりしていればそこまでの支援が必要ないケースもあります。
その為、あくまで各サービスが「どの程度リソースが必要なのか?」をベースに、手法毎にハイタッチ・ロータッチ・テックタッチを分けるべきだと考えています。
なお小規模ユーザにも無償でハイタッチを行えということではありません。ハイタッチの手法を行う場合はリソースも掛かるという点は間違いない為、小規模でもハイタッチ的な手法が必要場合はスポットでユーザ様に費用をいただくなどの調整をすれば良いと考えています。
「自社にとって該当ユーザがどの程度重要なのかを見極めた上で、各フェーズにおいてハイタッチ・ロータッチ・テックタッチの手法をベースにするかを選択する」という考え方をぜひお試し頂ければと考えています。
カスタマーサクセス設計完了です!
ここまでのエクササイズが完了すると、恐らく下記のような表が出来上がったかと思います。こちらが皆様のサービスにおけるユーザ体験を最高にし心理ロイヤリティを醸成する為の戦略となります。
項目 | ユーザが実行すること | ユーザが体験すること | 提供ずみのサービス | 提供すべきサービス | 必要な工数 | フェーズのゴール |
---|---|---|---|---|---|---|
導入フェーズ | ||||||
ランニングフェーズ | ||||||
運用フェーズ | ||||||
活用フェーズ | ||||||
更新フェーズ |
なお、ここでリストアップした「提供すべきサービス」を最初から全て準備する必要はありません。まずは最低限できるところから開始し、スモールスタートで徐々にユーザに提供していってください。その上でユーザからフィードバックを頂いてください。
そうすることで、すでに提供を開始したサービスはより良いものに改善できますし、またもしかすると自分たちでは思いつかなかった新たなサービス案に巡り会うことができるかもしれません。
ここまでユーザのことを考え設計を行った皆様であれば大丈夫ですので、自信を持って活動をスタートしてもらえればと思います!